今ではありがたいことに完全予約制で営業させていただいていますが、オープン当初はお客さんが全然来なくて毎日暇をしていました。空いている時間と廃棄になってしまう肉を使って毎日のように試作を重ねていました。油の温度を高くすると肉の外側ばかりに火が入り均一にならないが、逆に泡も立たないくらいの低温で揚げてみると均一に火が通ることがわかりました。そんな風に何度も試作を重ねていくうちに、今の「低温で時間をかけて揚げる」方法にたどり着きました。オープンから約3年で今のスタイルのとんかつになり、行列ができるようになったのは4,5年目からでした。
とんかつ屋なので豚肉にはこだわっています。本当に数多くの銘柄豚を試してきましたが、その中でも貴社の雪室熟成黄金豚は別格で、最初に試食した時は本当に驚きました。まず、驚くほどやわらかい。箸で持っただけで他の豚との違いがわかるほどです。そして一口食べれば、食感が良く歯切れの良さも素晴らしいです。旨味も濃厚で、甘みも強く感じられるので当店こだわりの衣やラードとの相性は抜群です。
他の銘柄豚のメニューも提供している当店ですが、多くのお客様が雪室熟成黄金豚を目当てに来店されているので、雪室熟成黄金豚にもファンがついているのだなと感じています。
また、豚肉以外にも衣、ラードなど全てにおいてこだわりを持っています。特に衣はとんかつで最初に舌に触れるので、衣の食感も大事にしています。使っているパン粉は“成蔵”用に粗さを指定して特別に作ってもらっています。立ちが良く、食べると口の中で衣が溶けるように消えるので、その直後に肉の旨味が来ます。とんかつの理想の形ですね。
お客様が少なかった時期でも質を下げずに信念を持って、おいしいとんかつを追い求め続けていたから、来てくださるお客様が増えてきたのかもしれません。そしてこの数年は海外からのお客様も非常に増えてきています。国内外問わず多くの方々にとんかつのおいしさを知ってもらうことができ非常に嬉しく思っています。もっと知ってもらうために、いつかは海外展開ができたらいいなと考えています。